ナガサキ修学旅行と折り鶴の取り組み

 長崎原爆の模型実物大を綾部で借りてきて、玄関前に設置した。又、人権推進室から原爆ミニパネルを借りてきて同時に展示した。迫力があった。
 事前学習として現在の核兵器の状況を知るため「核戦争後の地球」の地球炎上・地球凍結の二本のビデオを視聴。続いて全校道徳「生命の尊重」の中で、ビデオ「地球の風ぐるま」を通して原爆被災の状況を子どもの視点で理解し、その後自分たちには何が出来るのかを考えさせるために綾部中学校の生徒たちが取り組んだ「未来を生きる子ら」の像建立の取り組みを当時の「ニュース23」での除幕式の報道を見て学んだ。そして3年生の平和セレモニー担当が折り鶴の依頼を全校生徒にした。

 折り鶴は◯◯中学校区のコミセンや郵便局、小学校等10ヶ所に折り紙を置かせてもらい、地元の新聞に報道をしてもらうことで福知山市内の被爆体験者にも広げた。福知山原爆被災者の会の代表芦田晃さんが211羽の折り鶴を持って来校された。三年生の学級に来てもらい、「折り鶴」「ふりそでの少女」の二曲をお礼に聴いてもらった。折り鶴は◯◯校区で千羽以上大量に折っていただいた方もあり、また地域のイベントで集まった方々で折っていただいたりして、最終的に15407羽集まった。小学生の放課後の活動をする児童クラブからも届いた。折り鶴とともに届けられたメッセージを「折り鶴」ニュースにして修学旅行までに3号発行し生徒・地域に配付した。

 修学旅行が近づくにつれ増えていく玄関前の折り鶴に、長崎に行くことが自分たちのためだけでないことを意識していったと思う。多くの人たちの思いを持って長崎に行くことを自覚していった。折り鶴のケースはアクリルケースを四つ用意して、中にアンケートを元に検討した「絶対平和」「平和が一番」の言葉を正方形の色紙に墨で習字して書き入れた。習字は一生徒が四時間半かかって家で仕上げた。平和宣言は一定の指導をしながら一生徒が作成した。それは今までの取り組みを集約し表現したものだった。

 「折り鶴」「ふりそでの少女」二曲の歌の曲想を捉えるため、作詞作曲をした梅原司平さんの書かれた手記を読み、この曲を作られる前に多くの勉強をされたことや福留志なさんとの出会いなどを知った。そのとき私は同時に福留志なさんの遺品であるやなぎごおりと乳幼児に着せたであろう着物(実物展示資料)を生徒に見せた。この授業の後から女子生徒の声が一段と大きくなった。「ナガサキに翔ぶ」の本は36人の生徒中23人が借り、半分以上の生徒が読んだ。この本を含め、事前学習で使ったビデオなどは全生徒が見た。

 修学旅行前日には最後の事前学習として班別で訪問する原爆関連遺構にかかわる事前学習を生徒たちだけで行った。私一人が6班を見て周ったが、班長・副班長を中心におこなった。この班別に行く行動には、その後の生徒会活動につなげられる内容を盛り込んだ。滑石中学校、活水高校との関連は若い同世代同士の交流による意識の高まりを期待した。被爆柿の木を保存されている諌山さん宅・おじぞうさまを保存されている引地さん宅は市民レベルでの原爆被爆体験の維持されている方との出会いを企画した。城山小学校はふりそでの少女の母校であり、そのコーナーもある。さらにもう一つは末永浩さんの朝鮮人・中国人の犠牲者を通して、加害の部分を見つめさせたかった。私自身が歴史学習をしていない生徒たちである。

 さて、修学旅行当日。全員参加を提起し、学級全体で取り組んできた修学旅行の朝、入学以来初めて36人の生徒が全員集合した。多くの生徒がそのことを意識していた。K先生が記念写真を撮る提案を突然した。みんなが喜んだ。全員の写真を一枚は撮ることができた。私的な関係を軸にそれを支える班集団をつくり、学校から地域に折り鶴の輪を広げた。その中での全員参加だった。一緒に買い物に行って準備をし、前日に一泊させてくれたり、毎日届け物をしてくれた。皆を修学旅行に来させた力はクラスの修学旅行に一緒に行こうという思いの強さであった。

 二日目も朝から強い雨が降っていた。みんなで傘をさし、原爆資料館に向かった。資料館の見学後は谷口すみてるさんが自分の写真を交えて被爆体験を語ってくれた。お礼に歌を歌ったが、谷口さん自身が一緒に歌ってくれた。その後原爆資料館の休憩室のふりそでの少女像の見える位置で平和セレモニーを実施。諫山信子さん、末永浩さん、原爆資料館の方、そして活水高校の生徒たちが参加してくれた。歌だけは雨ではあったがふりそでの少女像の前で歌いたいという生徒の思いで傘をさしながら歌った。雨の中ではあったが、わずか36人の歌声とは思えない気持ちのこもった大きな歌声となった。(CDあり)午後からの原爆関連の班別行動もしっかりおこなえた。

 東京から急きょ変更された長崎は三日間雨だった。しかし、生徒たちは雨だったけど満足した。36人全員の修学旅行記念冊子「長崎修学旅行のまとめ」(全200ページ)はみんなの宝物になるだろう。